“制作請負”ではなく、その会社の一員として。【プロデューサー/コピーライター:古澤敦貴】
この連載について
この記事は、中小企業の“経営の現場”の記録です。
日々、企業とともに悩み、揺れ、言葉を探してきたSASIのプロデューサー・ディレクターが、実際に立ち会った“あの瞬間”を綴っています。
登場する企業名・人物名は仮名ですが
その場で交わされた言葉や空気、涙や沈黙はすべて本物です。
会社の一員として向き合うこと。そして、一緒につくりあげていくこと。
ここからは、SASIプロデューサー/コピーライター古澤敦貴の言葉で綴っていきます。
これまでクリエイティブ業界で、紙でもデジタルでも、さまざまなモノを制作してきました。
そんな私が2025年8月でSASIに入社して1年。
これまでとは頭の使い方も、接し方も、提案方法もまったく違う仕事をしています。
その中で、この仕事の醍醐味。
そして、とても基本的だけれど大切なことを意識するきっかけになった
──とある製造業さんのお話です。
セッションを通じて、経営者・リーダー・社員・取引先まで、あらゆる人から「この会社らしさ」を深掘りしました。
そこで出会った人すべてが理念を非常に大切にし、体現している姿に驚いたことを今でも覚えています。
小さな変化が、大きな嬉しさに。
まず、「らしさ」の深掘りの結果、アイデンティティやビジョンを策定し、ご提案した際に嬉しかったことについて書いてみようと思います。
SASIでは、経営者・リーダー・社員へのヒアリングや、取引先への同行ヒアリングを繰り返すことで「その会社らしさ」を抽出していきます。
その人が大切にしている気持ち
なぜ働くのかという原点
どんな時に喜びを感じるのか
こうした“個人”に焦点を当てたセッションがとても大事です。
それを繰り返すことで、徐々に形が見えてきます。
最終的に策定したアイデンティティやビジョン、事業計画は、社員全員が集まる場で社長から発表されました。
私はその場には行けなかったのですが、発表後に内容の報告とともに届いたメッセージがとても印象的でした。
「経営計画発表のプレゼンに加えて、お互いを役職で呼ぶことをやめました。SASIさんからの学びです。ありがとうございました。」
この会社では、
社長呼びを禁止する
基本的には○○“さん”と呼ぶ
一部ファーストネームで呼ぶ
という新しい方針が発表されたのです。
フラットでオープンなコミュニケーションを目指すためです。
私たちSASIにも、関わる人をファーストネームで呼ぶ文化があります。
今回のヒアリングでも、お会いした方全員をファーストネームで呼ばせていただいていました。
その考え方、接し方に社長が共感し、経営方針発表時に新しいロゴとともにこの考え方を全社員に発表したのです。
このことを聞いた時は、すごく嬉しかったと記憶しています。
つくることが目的になっていた。
その後、組織改革の一環として、コーポレートサイトや会社案内を社員さんたちがチームを組んでつくるプロジェクトが始まりました。
冒頭でも少し触れましたが、元々この会社の社員さんたちは、自社の企業理念に非常に共感していました。
お話を伺った全員が、
「お客様のために何ができるのか」
「お客様のために変わり続ける」
という意識を持って仕事をされています。
だからこそ、プロジェクトの参加者を一般募集したにも関わらず、
定員以上の応募が集まりました。
私はこれまで数多くのWEBサイトやパンフレットを制作してきました。
その経験から、正直こう思っていました。
「きっとプロジェクトメンバーからはたくさん意見が出てくると思うけど、
その意見を汲み取りながら、サイトを“いつも通り”つくればいいんだよね。」
──その考えが、間違いでした。
“制作請負の人”で終わらないために。
プロジェクトは2週間ごとのワークショップ形式で進められました。
たとえば、
自分たちの強みは何か?
自分たちの会社のサービスに熱狂してくれる顧客は誰か?
といったテーマをセッションしながら、大きな方向性を定めていきます。
そして、WEBサイトのデザインをこちらで制作し、定例会でお見せしたときのこと。
想定していたとおり、さまざまな意見をいただきました。
議論が活発になるのはとてもいいことです。
しかし──
「誰の意見を聞き、誰の意見を断らないといけないのか・・・」
その判断軸を持てず、結果として打ち合わせはバラバラで曖昧なまま終了してしまいました。
会議をうまく進行できず、せっかく出していただいた意見も汲み取れない。
しっかりセッションもできなかった。
そのことにすごく落ち込みました。
打ち合わせの後、SASI代表の近藤からフィードバックをもらいました。
「”外部の制作の人”ではなく、”その会社の一員”という意識で、何がベストなのかを判断しないといけない」
他にも普段から近藤が他の会社の打ち合わせで
「僕もこの会社の経営者という立場で話させてもらいますが──」
という言葉をよく発しています。
今回も「この会社の一員であり、プロジェクトメンバーとして」という意識を持って臨まなければならなかった。
でも、これは制作に限らないのだと思います。
経営戦略などの提案でも同じこと。
表面上の数字や資産をだけを見て提案するのではなく、”この会社の一員”として課題を解決していくためには、何がベストなのかを考え抜いていく。
これまで「制作の古澤」と「クライアントさん」という立場でずっと仕事をしてきたので、
この考え方はとても新鮮であり、そしてとても大事な意識だなと感じました。
一緒に悩み、一緒に喜べる存在でありたい。
改めてですが、「会社の一員として」。
当たり前に聞こえるかもしれませんが、これは伴走していく者として、とても大事にしている意識です。
これまで15年ほど制作をしてきました。
なかなかこれまでの癖が抜け切らず苦しむこともあります。
ただ、表面上の課題解決、見た目のキレイさを整えるのではなく、
もっと深く付き合い、一緒に苦しみ、一緒に喜びを感じたい。
この気持ちを常に持ちながら、これからも
“制作請負”ではなく、“その会社の一員”として、立ち向かっていきたいと思います。
🎧 書ききれなかった想いは、アイデンティティ経営ラジオ(旧DOOR RADIO)で
この記事では書ききれなかった想いや、今だから言える話、
動画で語られた社員一人一人の思いや裏側は
SASIのポッドキャスト番組アイデンティティ経営ラジオにて深掘りしていきます。
