ライフスタイルを提案する酒蔵

CL:銀海酒造有限会社
Branding Design
兵庫県養父市
http://ginkai-syuzo.com/

自分の酒を、自分らしく売れない

兵庫の屋根と呼ばれる氷ノ山を望む但馬地方の養父市関宮に位置し、地元の酒として愛されてきた1897年に創業の銀海酒造有限会社。地元の酒米を使い自ら手で温度を感じながら醸した非常に奥行くの深い酒でありながら、自らの酒を酒店に営業しに行くことが非常に苦手であると安木社長は言っておられました。酒造りには自信があったものの、酒店に営業に行き「これじゃあかんで」と言われると、嫌になって帰ってきておられました。自分で納得のいく酒造りに邁進していたものの、OEMの売上げも下がり続け、直接販売もなかなかできない状況でした。

課題            売り上げの大半を占める一社のOEMからの脱却
その背景      営業不振と大口OEM先の売り上げ減少
地域資源      但馬地域の有機農家と造る完全手作りの酒
着目点         蔵元自らつくるこだわりの酒と、蔵元のアウトロー好きなアイデンティティ
解決方法      本物の手作りの酒を今の食卓に並ぶ、誰もやらないデザイン

PHASE 1

アイデンティティ抽出

コンサルティング
個別相談

安木社長と今後の販売計画や、会社としての理念など様々なことの経営的側面のヒアリングを重ねるも、なかなかスムーズに思いののった言葉になりませんでした。
しかし、一旦酒造りの話になると、これまでの受け答えが嘘のように自らの酒へのこだわりが出てきました。発酵の話、自然の話、水や米、神話の話など目を輝かせながら語るその様子から、自らが酒を作っているという楽しさとプライドがそこにあるからだと確信しました。
しかし、いい酒を「こだわりの酒」として紹介しても、全国にはいい酒ばかりであり、安木の酒をストレートにしても埋没するであろうと考えました。
しかし、4~5ヶ月続いたヒアリングの中にそのヒントはあった。自分の酒をどう飲んで欲しいか?という質問をした際に、「ブルーチーズと一緒に」とか「ニールヤングのこの曲がしみったれた感じで、よく会う」とどんどん出てきました。
ここからお酒の難しい話はやめて、安木社長の造る酒を「どうやって楽しむか?」ということに絞って話をしました。
安木社長は、オシャレをすることが好きで、音楽が好き、食事も、小説も、落語も酒とは関係ないがそのことを感じている時間が非常に好きな方でした。

PHASE 2

ブランド立ち上げ

ロゴデザイン / パッケージデザイン / グラフィックデザイン
webデザイン / インテリアデザイン

「自分はもともとアウトロー」振り切ってみる覚悟

「自分はもともとアウトローが好きだから」と、音楽や文化の話をたくさん話をしてくださりました。
ボトルのデザイン提案を控えて、これで腹をくくった私は、完全に振り切った提案をしました。
それは、氷ノ山の山並みを配しながらも、日本酒ともワインとも似つかないボトル、その土地の大きな桂の木を模したずんぐりむっくりの薬瓶を日本酒にという提案でした。
「ありえへん!」という第一声に、怒られたと思ったのですが、「こんなありえへんデザインの日本酒誰もやらへん。だからやりたい」と笑っておられました。
その後、これが俺の日本酒だという意識が高まり、「営業にいって話して分かってくれない店主はこちらから断って帰ってくる」というほどに心が固まっていました。

PHASE 3

ブランド育成

異業種交流
イベント

経営危機から利益3倍へ

最初の相談から、商品が発売できるまで1年ほどかかったのですが「いよいよ発売をしてこれからだ」というタイミングで、売り上げの実に6割を占めていた本陣のOEMが半分になるという事態になりました。
OEM先の売り上げは下がり続け、いよいよ仕出し事業も縮小ということだったようです。
OEMが半分になるということは、売上げの3割が一気になくなるということです。米の仕入れや固定経費などを考えると、いつ倒産してもおかしくないという状況に一気になっていました。
いよいよこれからという最悪のタイミングでした。しかし、地元城崎温泉での販売はもとより、大阪、神戸などへ出向き、販路を確実に伸ばしていった。面白い酒があると評判を呼び、東京でも販売が始まりました。
さらには日本を飛び越え、中国の高級ホテルのバーとも取引がはじまり、商品の利益率改善に努めたこともあり、結果的に昨年の利益の3倍を残す結果となりました。
その後も地元農家の米をつかって自分らしい酒を、まだ飲んだことのない人に飲んでもらえるよう、地道に努力を続けておられます。

クライアントの声

銀海酒造 有限会社 代表取締役安木 淳一郎

弊社は私と妻とアルバイト2名の本当に小さな酒蔵です。
自社の商品デザインは妻が担当しており、近藤氏と出会うまでは素人ながら少し自信がありました。ただ近藤氏とミーティングを重ねるうちに、自分たちのデザインに対する世界観が非常に狭いものであると感じました。近藤氏のデザインは、徹底した会話の中で自分達が本当にしたかったことを気づかさせてくれたと考えています。

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