直径100mからのまちづくり地主が自分たちで高めた地域の価値
CL:DAMAYA COMPANY 株式会社
Branding Design
兵庫県宝塚市
http://damaya-company.com/
保有物件の老朽化による入居率0パーセント状態からの脱却
宝塚歌劇団で全国的に有名な兵庫県宝塚市。歌劇団や阪急電鉄のイメージもあり、華やかな印象の宝塚において、DAMAYA COMPANYは下町と言われる小林(おばやし)駅から、徒歩15分という利便性が高いは言えない場所に位置します。築40年になる鉄骨造の店舗付き住宅のアパートも、老朽化による入居率が低下し始めます。駅やスーパーから近いわけでもないこともあり、賃料を下げるしかありませんでした。かつては商店街として賑わっていた周辺も、大型スーパーの出店なども影響し、徐々に商店が減っていきました。散髪屋やクリーニング、居酒屋などが入居していましたが、2014年にすべて退居してしまい、一棟が入居率0%になりました。
課題 空き家活用によるまちづくり事業とブランド化
その背景 賃貸マンション老朽化による入居率悪化
地域資源 隣接した3棟の保有物件と駐車場
着目点 DIY賃貸ブームとコミュニティづくり
解決方法 自然素材DIY賃貸マンションとテナント誘致、カフェやイベントによるコミュニティ形成
PHASE 1
アイデンティティ抽出
コンサルティング
個別相談
賃貸経営から見えてきたまちづくり意識
innovation(イノベーション)innocence(イノセンス)renovation(リノベーション)という言葉からinno house(イノハウス)と名付けられたこの物件は、周囲の反対もあった自然素材リノベーション、入居者がDIYできる賃貸マンションという、この地域にこれまでなかった価値のある物件ということもあり、工事完成前に5室全ての入居が決まりました。
友人やクライアントを月替わりに店長にしたSASI BAR(サシバー)という、月一バーイベントを毎月行い、空室だらけの長屋が住民同士のつながるコミュニティの場となっていきました。通常大家業では、離れた場所に保有物件があることが多いのに対して、Damaya companyの3つの保有物件は道と駐車場を挟んで隣接しています。
それを一番の強みだと考え、その真ん中に空間として広がっていた駐車場に新たな建物をつくり、小さなまちを作り物件としてだけでなく、エリア自体の価値を高めようと考えました。どうやって「まちを作るか」ということを一緒に考え、
まず検討したポイントは3つでした。
・これなら住みたいと思う建物の魅力をどう引き出すか?
・建物を作るだけでなく、その後どうやってコミュニティを作る?
・コミュニティの自己満足だけでなく、他の地域からも訪れたいと思えるエリアをどう作るか?
というポイントを木本社長と模型や現場で議論を交わしながら一緒に考えました。
PHASE 2
ブランド立ち上げ
ロゴデザイン / グラフィックデザイン
webデザイン / 建築デザイン
物件価値だけでなく、エリアの価値を高める仕組みづくり
阪急電鉄 小林駅から徒歩15分と利便性のいいとは言えない地域に、自然素材のDIY賃貸というだけで、全10室を埋めることができるか?
また、単なる仕事から帰って寝るところでいいのか?ということを考えました。単なる建物だけの魅力ではなく、「そこに住む人、働きに来る人、訪れる人、様々な動機を持った人々が、交流し自然と絡み合う」という想いをこめて計画していく中で、ここに住む人がここに住むこと自体を誇りに思ってくれるようにするために、建物だけでなくこのエリアのブランド価値を上げていくことにしました。
しかし、正直宝塚市内において同地区は下町であり、憧れを生むような場所ではありませんでした。
そこで「自分たちのまちは、自分たちで作る」というスローガンをたてて、このエリアをinno town(イノタウン)と名付けて、新築と周りの3棟を含め、直径100メートルほどの小さなまちと定義しました。
その小さな町には、こんなお店がいるだろうと妄想しつつ、リーシングを行い、そしてシンボルのデザインには、綿毛のように私たちの想いが飛んで行って、自然と広がることをイメージしながらこのエリア自身の魅力を高めることに注力しました。
PHASE 3
ブランド育成
異業種交流
イベント
満室経営、そしてまちから必要とされる拠点へ
建物が完成するに従い、新しいまちを自分たちで作るという想いが伝わったのか、あらかじめ予定していたカフェだけでなく、有機野菜の八百屋、ヨーロッパ雑貨屋、健康食とマッサージ、料理教室などの事業者がinno townに出店することとなりました。
賃貸マンションも10月オープンという時期にもかかわらず、すべての部屋が埋まり、それと同時に保有物件のすべてが満室となりました。
その様子が様々な雑誌やメディアに取り上げられ、宝塚市内だけでなく、不動産業界など広く全国から視察が続いています。
また経営状況も、inno houseを筆頭にkarakusaも入居者の退去が決まると、不動産仲介業社を通さなくてもすぐに決まるという満室経営という状況が続いています。
どう見ても不利な状況にあったアパートを、周りの反対を押し切り新たな価値を生むエリアに生まれ変わらせた木本社長は、東京や大阪などで不動産業社向けセミナーに講師として呼ばれるなど、コンサルティング業も始めることとなりました。
まずは自分の住みたい部屋に、それを建物からまちにスケールを広げていき、その想いは確実に全国へと拡がっています。
クライアントの声
Damaya Company 株式会社 代表取締役木本 孝広
デザイン会社という枠を超え、本質的なその企業の目的を一緒に達成してく為のパートナーという会社だと思います。いつもいろんなことに挑戦して、新しいものを作り上げていくクリエイティブなところも共感が持てます。今後ともよろしくお願いいたします。