
2025年4月30日、私はILBHで構想した事業プラン「おさんぽ吟」をオープンしました。この場所は、かつて両親が20年近く蕎麦屋を営んでいた、私にとって思い出深い場所です。
当たり前が崩れたあの日
2019年の大晦日、例年通り年越しそばの準備で忙しく、元旦は家族全員がぐったりと過ごすのが恒例でした。しかし2020年の元旦は、母の体調が悪く、昼には部屋で横になっていました。夜になり、母から見せられた胸の「かぶれ」。素人目にも乳がんかもしれない、という予感がありました。
私は元旦の早朝からランニングをし、近隣のお寺で“一番鐘”を鳴らし、「今年はチャレンジの年にする」と希望をもち決意したばかりでした。それだけに、母の病の発覚は衝撃的で、「鐘を鳴らして2020年の幸運を使い果たしてしまったのか…」とさえ思いました。疲労困憊の中での母からの告白。その胸の「かぶれ」を見て、私は「人生に悔いのないよう、母を楽しませてあげよう」と心に決めました。
その日の夜、母は救急搬送されました。お正月で専門医が不在だったため精密検査は受けられず、年明けの再診を待つことに。しかし、再診を待っている間に母は心筋梗塞を起こし、救急車の中と病院で心肺停止に。検査の結果、胸の「かぶれ」はステージ4の乳がんであることが判明しました。母は「心配をかけたくない」という思いから、日々無理を続け胸は「かぶれ」と思うようにして、偽っていたのかもしれません。
母は一命を取り留めたものの、約3ヶ月の入院を経て、杖なしでは歩くのが困難になりました。入院中は毎日病院に通い、そばで支えることが私の使命となりました。
その後、父は蕎麦屋の再開を考えていましたが、コロナ禍が直撃し断念。さらにその年の秋には、父も脳梗塞で倒れ入院しました。懸命なリハビリをしましたが右手に麻痺が少し残り、体調不良も重なり店は自然と閉店することになりました。
かつての「普通」だった日常は、あっという間に崩れ去りました。「健康は当たり前ではない」。このことを痛感させられました。私自身もかつて病気を患い、運動によって回復した経験があります。だからこそ、「健康」「運動」「つながり」をテーマに何かを始めたいという思いが、この頃から芽生え始めていました。
両親の体調不良が続く中、私は離婚も経験し、娘を育てながら工場で働いていました。母は2022年の秋、紅葉の葉が舞い散るように天国へ旅立ちました。悲しみにくれながらも、日々の生活は続くのでグラファイトを削る現場で全身真っ黒になりながら、ボルトを締めたり、荷物を運んだり…介護、家事、仕事と無理がたたって右手や腰を痛め、働けなくなってしまいました。有給も底を突き、周囲の視線もつらく、家庭も大変な状況で、「何かを変えなければ」という切迫した思いがありました。
そんな時、Facebookで偶然ILBHの存在を知りました。「市の事業だし、無料だし、説明会に行くだけなら問題はない」そう思って参加を決意しました。
しかし、「ペルソナ」「アイデンティティ」といった聞き慣れない言葉が飛び交い、周りの参加者が優秀に見え、「場違いだったかもしれない」と感じました。さらに、「隣の人に自分の過去を話してみましょう」と言われた時には驚きました。私が育った時代は「先生の言うことが正解」とされ、自分の考えを表現する事は少なかったからです。
まして、隣の人はたまたま隣り合わせただけの人です。
それでも、何度もアウトプットを繰り返すうちに、自分がどんな人物なのか霧が晴れていくように見えてきました。途中からは娘も興味をもち一緒に参加してくれるようになり、私にとって大きな支えとなりました。
〜これから受講を検討されている方へ〜
私がILBHを知ったのは、本当に偶然でした。
「なんか変わりたい、でも何をしたらいいか分からない」。そんな状態でした。
最初は「場違いだったかも」と感じていた私でも、
少しずつ、自分のことを話していい、自分の人生に向き合っていいんだと思えるようになっていきました。
ILBHは、答えを教えてくれる場所ではありません。
でも、「自分の中にある答え」を見つけていくプロセスを支えてくれます。
過去を否定せず、今ある環境を受け入れながら、自分の輪郭を掴むことができる。
そんな場所でした。
不安なままでいいんです。行ってみるだけでも、何かが動き出します。
私はILBHに参加して、自分の人生を「自分の手でつくる」感覚を得られました。
ぜひ、一歩を踏み出してみてください。
ILBHは本当に面白くて、プラン編の講師・近藤さんに言われた「やりたいことは終わる頃には変わっているかもしれませんよ」という言葉が、まさにその通りになりました。
最初は「お金をかけずにやろう」と思っていたのに、
いまはめちゃくちゃお金をかけています(笑)。
視点も変わりました。
これまではただの“お母さん”だったけれど、今は“経営者”としての視点も
少しずつ持てるようになってきた気がします。
ただ正直、働いていた頃のほうが楽だったかもと思うこともあります。
朝と夜の営業を両方やろうとした結果、
毎日20時間近く起きていたり、営業時間が定まらずチラシも出しづらい。
悩みは尽きません。
それでも、来てくれる仲間やILBHの受講生たちがいてアドバイスをくれたり、一
緒に悩んでくれたりする。
その中で自分のビジネスも、少しずつ地域にフィットしていくのかなと思っています。
正直、これからもずっと悩みながらやっていくんだと思います。
でも、それでもいいんだと思えるようになりました。
悩みながら、迷いながらでも、自分の人生をちゃんと「自分のもの」として進んでいきたい。今は、そう思っています。
主催:生駒市 受託者:株式会社SASI 問い合わせ先:IKOMA LOCAL BUSINESS HUB事務局(株式会社SASI内) TEL:0798-55-7579 MAIL:contact@sasi-d.com