“自分らしさ”から始まる!?事業と組織の変革ーアイデンティティ経営とは何か?【概論#1】

あなたは、何のために「経営」をしていますか?

「会社とはこうあるべき」「経営者はこう振る舞うべき」
そんな“べき論”に追われて、気づけば本当の気持ちをしまい込んでしまっていた──

そんな感覚を抱いたことはありませんか?

なんでこの仕事をしているんだろう?
自分が本当にやりたかったことは何だったんだろう?

その問いを深めていくとき、ふとした瞬間に「顔が変わる」人たちがいます。
そこには、「あるべき姿」ではなく、「ありたい姿」と向き合いはじめた人の目の輝きがあります。


📝この連載について

この連載「アイデンティティ経営概論」では
株式会社SASI代表・近藤清人が13年以上にわたり実践してきた「アイデンティティ経営」の考え方やノウハウを、あらためて言語化・体系化しながらお届けします。

SASIは、「日本の100年を、ひとりの気持ちから」というビジョンのもと、企業のアイデンティティに根ざした経営変革を支援してきたチームです。
経営者や組織が「自分たちらしさ」と向き合い、内側から変革を起こすこと。
その過程に徹底して伴走する姿勢を大切にしています。

▶SASI公式サイト

この連載では
アイデンティティ経営の“基本の「き」”から
その背景・効果・プロセス・活用法に至るまでを、毎月少しずつ丁寧に紐解いていきます。


1. 経営にとって“アイデンティティ”が重要であるということ

ここからは、SASI代表・近藤清人の言葉で綴っていきます。

皆様にとっては耳馴染みのない言葉だと感じますが、経営にとってアイデンティティが非常に重要であると私たちは考えています。

昨今、パーパスやミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を整えることの重要性が広く語られるようになりました。
それは非常に大切な流れだと思います。
ですが、SASIではそれだけではなく、「個人の気持ち」や「考え方」を出発点にすることを重視しています。
つまり、個人のアイデンティティから成長戦略を構想するという考え方です。

その思想を私たちは「アイデンティティ経営」と呼び、これまで13年間にわたり、さまざまな企業の変革に伴走してきました。

私たちは、アイデンティティ経営を次のように定義しています。

アイデンティティ経営とは
個人や企業が、これまでの経験や歴史から生まれた価値観や本質を対話によって深掘りし、
その独自のアイデンティティ=強みを活かして無形資産を創造・活用し、
中長期的な利益を生み出す経営である。

この定義の中でも特に強調したいのは、「対話」という言葉です。

アイデンティティとは、
自己の内部にある変わらない価値観や衝動のようなものであり、それを徹底的に深掘りしていくことによって
「自分(自社)はどうありたいのか」
「どんな未来をつくりたいのか」
といったビジョンが、対話によってより自分ごととして見えてきます。

そして、それは新たな行動を引き出す力になります。
経営における本当の変革とは、このような内側からの変化
――つまり“自己変革力”を高めるところから始まると私は考えています。


2. なぜ、アイデンティティが経営にとって重要なのか

私たちはこれまで、多くの事業者の方々とのヒアリングやセッションを通じて、この「アイデンティティ」に関する対話を重ねてきました。

すると、みるみるうちに顔つきが変わっていく瞬間に立ち会うことがあります。

そこに現れているのは、「あるべき論」ではなく、「どうありたいか」という気持ちです。

事業者の多くは、外部環境の変化に対応するために
「どうすれば生き延びられるか」「どんな戦略をとるべきか」という問いに向き合ってきたと思います。

でも、その過程で、一度立ち止まって
「自分はなぜこの仕事をしているのか」
「本当はどうしたいのか」と考える機会は、意外と少ないのではないでしょうか。

そうした問いを投げかけると、最初は戸惑いつつも、だんだんと心の奥にしまい込んでいた純粋な気持ちが現れてきます。

たとえば──

「人の役に立ちたいという気持ちは、子供の頃からあったんですか?」

「その想いが芽生えたのは、どんな出来事でしたか?」

「そのとき、どんな感情を抱いたのか覚えていますか?」

そうした問いを重ねることで、
自分でも気づいていなかった感情や、社会に対して感じていた怒り、願いのようなものが姿を現し始めるのです。

私たちが重視しているのは、このプロセスそのものです。

「べき論」ではなく、「ありたい姿」を出発点にする。
それこそが、未来をつくるための最初の一歩になると信じています。


3. 「あるべき姿」から「ありたい姿」への変革が、ブランドとイノベーションを生む

このような対話を重ねていくと、次第に「自分が大切にしたいこと」「社会に対して届けたい価値」についての実感が強まり、やがて視点が変わっていきます。

それは──

「この気持ちのまま行動を続けていくと、誰が喜んでくれるだろう?」

「社会にはどんな変化が起きるだろう?」

「その中心にいる自分は、どんなブランドとして認知されていくのだろう?」

といった、より俯瞰的で創造的な視点への変化です。

この“メタ認知”が生まれた瞬間、どの事業者も、明らかに表情が変わります。

自分のありたい姿を軸に、会社のリソースやアセットをどう活かして未来を描くかという
「能動的な経営」へと、思考とエネルギーが切り替わっていくのです。


ここでようやく、

過去の経験や価値観(アイデンティティ)

現在の資源や資産、またその関係性(リソース/アセット)

未来への衝動(ビジョン)

がつながり、掛け算として新たな形を生み出し始めます。

この新結合の結果として、プロダクトやサービスが生まれたり、ブランドが育っていったりする。
そこにこそ「イノベーション」の源泉があると私たちは考えています。


これは、経営者だけの話ではありません。社員一人ひとりにとっても同じことが言えます。

「お金のために働く」のではなく、
「自分はこうありたいからここで働いている」と思えるようになった瞬間、
その人の中にまったく新しいアプローチや挑戦が芽生えることがあります。

企業全体がそのような“自分ごと”で動き始めたとき、初めて本当の意味での変革が生まれていくのです。


4. 自分から、組織へ、そして社会へ──変革の出発点としてのアイデンティティ

SASIでは「日本の100年を、ひとりの気持ちから」というビジョンを掲げています。

社会は不安定さを増し、経営を取り巻く環境もまさにVUCAそのもの。
「分かれ道」だからこそ、一度立ち止まり、にこれまでの経営や人生の、そしてこれからの生き方の価値観の根っこである「アイデンティティ」を見直すことがビジョンを見直す鍵となります。
そのビジョンの実現のために、迷いながらも自分らしく邁進していく姿が仲間を勇気づけ、共により良い社会と、これからの日本の100年をデザインする原動力となります。
それには、まずは「自分」から、そして「組織」を変えて、「社会」を変えるイノベーターへ。

アイデンティティ経営とは、そんな変革の連鎖を生むアプローチです。


おわりに

私たちはこれからも、「アイデンティティ」という最も個人的な領域から出発する経営のあり方を、現場の実践を通じて発信していきます。

この記事を通して、
「そうか、自分もそこから始めていいんだ」と感じてもらえたなら、それほど嬉しいことはありません。

次回以降も、アイデンティティ経営に関するテーマをひとつずつ紐解いていきます。

引き続き、どうぞよろしくお願いします。

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