岡山県倉敷市に本社を置き、岡山工場にて生地の染色をおこなう正織興業株式会社。
1880年の創業より、紡績や織布、染色を一貫して手がけるメーカーとして発展してきた同社は、国内でも最も信頼を寄せられる染色メーカーの一つです。
現在もワークウェアを中心に忠実に色をコントロールしながら、培って来られた染色技術で国内の衣料業界には欠かせない存在です。
ただ、厳しい管理のもと、大量に加工する染色過程の中でどうしても出てきてしまう出荷規格外品がありました。

製品として出荷できないこの布を生かそうと、5年ほど前から布を使った新たな製品作りに着手された正織興業株式会社。
岡山県立大学のデザイン学部の協力のもと、布を積層し固める素材を開発された。
この素材を活かすべく、新たな製品ブランド作りの支援としてSASI DESIGNも参加することになりました。
単に積層するだけでなく、特殊な加工を加えた新素材開発は困難を極めましたが、担当者の粘り強い探究心から「見たこともない素材」が出来上がりました。

それは木目のような、大理石の模様のような、等高線や地層にも見える不思議な模様。
そして布の質感が残り優しさを感じる新素材。
この新たな素材を「SAN」と名付けました。
「3」は吉数であり、陰陽学では万物を創生する意味合いをもち、布を重ねる様子が漢数字の「三」を想像させるため、新たな素材を世界に発信するため「SAN」としました。

コンセプトは「重ねのゆらぎ」
布を重ね、色を重ね
その色相の間にある景色や時のゆらぎにも似た
追憶を呼び起こすプロダクト
http://san-products.com
布を何重にも重ね削り出した、同じ表情が二つとない唯一無二の製品。
その素材をインテリア空間で活かすための製品デザインも行いました。

アートピースのように壁に描けるフックとして

時間を彩るウォールクロック

不思議な存在感をもつスツール

デスクを上質に演出するペンスタンド

素材が共鳴するアクセサリーケース

この素材は布でできているので、アロマオイルを垂らすと
蓋を開けるたびに、ふわりとアロマが香り気分を高めてくれます。

そして岡山県立大学の三原准教授のデザインされたミラーとフレーム
何度もプロジェクトチームでミーティングを行い、なんとか2017年の11月にデビューしました。


おかげさまで予想を上回る来場者の方に見ていただき、発売前から日経MJのデザイン面に取り上げられるなど、新素材の可能性を感じることができました。
発売開始は今年の春の予定。
ここからが本番だと思っています。
まだ、量産をできる体制ではなく、一品一品生産するしかない段階です。
ストーリーだけでなく、きっちりと評価も利益も生み出せる事業展開をフォローしなければと考えています。
珍しい素材から、世界に誇る製品ブランドへ、そして事業の新たな可能性としっかりとした収益を上げるために全力で取り組みます。