人材不足は起こるべくして起こっている。——人材不足を根本的に解決する[前編]【概論#4】
あなたの会社に、35〜45歳の社員は何人いますか?
「即戦力が採れない」「気づけば辞めていく」──
そう嘆く経営者の多くに共通しているのは、組織を最も動かすはずのミドル世代がごっそり抜け落ちているという現実です。
人材不足は、人口減少や景気のせいだけではありません。
実際のところ、それは起こるべくして起こっている必然の結果なのです。
なぜ、組織の真ん中が空洞になってしまうのか。
なぜ、採用しても社員が定着しないのか。
今回は、その構造をひも解きながら、次回の後編で語る「ビジョンが果たす役割」につなげていきます。
📝この連載について
この連載「アイデンティティ経営概論」では
株式会社SASI代表・近藤清人が13年以上にわたり実践してきた「アイデンティティ経営」の考え方やノウハウを、あらためて言語化・体系化しながらお届けします。
SASIは、「日本の100年を、ひとりの気持ちから」というビジョンのもと、企業のアイデンティティに根ざした経営変革を支援してきたチームです。
経営者や組織が「自分たちらしさ」と向き合い、内側から変革を起こすこと。
その過程に徹底して伴走する姿勢を大切にしています。
この連載では
アイデンティティ経営の“基本の「き」”から
その背景・効果・プロセス・活用法に至るまでを、毎月少しずつ丁寧に紐解いていきます。
1. ミドル世代がいない組織の現実
ここからは、SASI代表・近藤清人の言葉で綴っていきます。
昨今の人材不足が叫ばれる中で、さまざまな経営の現場に入っていて感じることがあります。
それはミドル世代がどこの会社もいないということです。
50代以上の管理職や役員はしっかりと在籍している。
新卒で入ってきた20代社員も少数ながらまだ残っている。
しかし、最も会社を動かすはずの35〜45歳の層が「いない」と困っている企業が本当に多いのです。
しかも「即戦力人材が獲れない」、さらに「期待していた社員が辞めていく」という悪循環に陥っている会社も少なくありません。
2. 「言ったもん負け」が離職を生む
たとえば、事業承継をして「自分たちで考えよう」と若手40代の社長が頑張っても、
先代社長に忠誠心で報いてきた50代の管理職や役員が、若手やミドル層の意見を「どうやってやるんだ」と潰してしまう。
「そんなことより本業を頑張れ」と叱咤され、挑戦が芽を出す前に摘み取られてしまう。
その結果、「言ったもん負け状態」が広がり、組織の硬直化と離職リスクが一気に高まります。
3. MVVやパーパスだけでは解決しない
こうした状態のとき、多くの企業はMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)やパーパスを設定し、一体感のある経営を目指そうとします。
もちろん、それ自体はとても良い取り組みです。
しかし──
クレドカードを作ったり、朝礼で唱和したりすれば本当に目指す状態になれるのでしょうか?
残念ながら、それだけでは根本的な解決にはつながらないのが現実です。
4. 入社時の意思決定プロセス
実際のところ、社員は「ビジョンがあるから」入社しているわけではありません。
面接や面談で「御社のビジョンに共感しました」と語ってくれる応募者は確かにいます。
しかし現社員ですらまだ理解しきれていないビジョンを、入社前の候補者が深く理解できるでしょうか。
応募を決めるとき、多くの人が確認しているのは次のような点です。
募集職種が自分の興味と合い、これまでの知識やスキルを活かせるか
企業の実績や評価が信頼できるか
仕事内容・待遇・ライフワークバランスを見て「なりたい自分になれるか」を想像できるか
この流れが一般的です。
だからこそ、入社時点ではビジョンが主な動機にはなっていない。
そのままの動機で働き続ければ、人間関係がぎくしゃくしたり、条件の良い会社があれば転職してしまう──。
離職リスクが高いのは当然なのです。

5. ビジョンはなぜ必要なのか─
では、「ビジョンは必要ないのか?」
もちろん、そんなことはありません。むしろここからが重要です。
入社時の動機づけだけでは人材は定着しない。
だからこそ、働き続ける中でビジョンがどう機能するかを考える必要があります。
次回の後編では、「ビジョンが人材不足にどう関わるのか」をさらに詳しく語っていきます。
おわりに
人材不足は、外部環境の変化だけが原因ではありません。
組織の構造や文化に内在する必然の結果として生じているのです。
次回は、そこに「ビジョン」がどう関わってくるのか。
根本的な解決の糸口を探っていきます。
引き続き、どうぞよろしくお願いします。
