ようやく組織が動いた日、みんなが泣いた【プロデューサー:近藤清人】

この連載について

この記事は、中小企業の“経営の現場”の記録です。
日々、企業とともに悩み、揺れ、言葉を探してきたSASIのプロデューサー・ディレクターが、実際に立ち会った“あの瞬間”を綴っています。

登場する企業名・人物名は仮名ですが
その場で交わされた言葉や空気、涙や沈黙はすべて本物です。

物語のはじまり

関西一円で店舗展開をする小売業。
その規模は大きくなり、創業以来ずっと創業者の強い想いで走ってきた会社が、「組織としてもう一段階前に進みたい」という相談が。
そんな課題を企業ロゴ(VI)を一新するというタイミングもあり、いっそのことなら社員の方と共に自社を見つめ直し、自分たちの仕事や価値を問い直すプロジェクトに挑みました。

現場の声を拾い上げ、チームで言葉をつくっていく7ヶ月。
その先に待っていたのは、涙と円陣の朝。
これは、「みんなで会社を動かす」ことがはじめて実感された瞬間の記録です。


ようやく組織が動いた日、みんなが泣いた。

実は、SASIがこの会社と関わり、伴走させていただいたのは2回目でした。
前回、私たちがこの会社と関わったプロジェクトでは
この会社のアイデンティティを探り、ビジョンを導き出して、これまでの道のりからアップデートしていくためのコンセプトまでしっかりと決め、「この方向で進んでいく」と光が見えていました。

しかし、その後のサービス展開をしていくにあたり、商品開発を行うにあたり、どうしてもスピード最優先で進めざるを得ない状況でした。
なんとか納期には間に合わせたものの、社長のひとことが胸に刺さりました。

「もっと、みんなで進めるものだと思っていた」

自分たちなりに必死で動いたつもりだっただけに、正直落ち込みました。
でもその言葉は、本当に求められていたのが“納品”ではなく“納得”だったことを教えてくれました。

そして数ヶ月後、もう一度期待をいただき、次の依頼が届いたとき、私はこう返しました。

「VIをつくっても、売上は上がりません。でも、自分たちの価値を、自分たちの言葉で語れるようにしませんか?」

チームでつくる、言葉と意味

そこから始まったのは、「会社の意味を問い直す」旅でした。
「私たちの仕事って、なんだろう?」
「誰に、どんな喜びを届けたいんだろう?」

チームリーダーたちは現場をまわり、仲間の声を集め、何度も言葉にし直す。
会社の中で語られてこなかった想いが、少しずつ形になっていく。

はじめは会社に対しての意見を求めても言葉にしにくそうだったリーダーたちも、プロジェクトが進むごとに変わっていきました。
対話が重なり、熱が生まれ、自主的にプロジェクトを動かす姿が現れはじめたのです。

発表会の朝、円陣が組まれた

そして迎えたVI発表会の日。
会場に集まった社員たちは、誰に言われるでもなく円陣を組み、掛け声を上げていました。気持ちは、もうすでにそこにあった。

社長が登場し、チームが自ら言葉を語り、動画を上映すると、そこにいたスタッフの目から、自然と涙がこぼれました。

「ありがとう」

社長の声が詰まり、そう言って頭を下げた瞬間、私もまた、前回の悔しさが報われたような気がしました。

「ようやく、みんなで会社を動かすことができました。
これまでは、僕だけが言っていたので…だからこそ焦ってきました。
この動き出した会社をどこにつれていくのか。僕の責任は重大です」

その言葉が、ずっと聞きたかった。

「誰かの想いが、組織を動かす」ことの証明

会社は“仕組み”ではなく、“人”でできている。
そして、経営者の想いや願いは、必ず現場に伝播する。

だからこそ、その想いを、言葉にし、行動にし、一緒につくることができると、今回のプロジェクトが教えてくれました。

チームリーダーたちは、「ビジョンの伝道師」になった。
私はその姿に、これからも伴走していきたいと思っています。

🎧 書ききれなかった想いは、アイデンティティ経営ラジオ(旧DOOR RADIO)で

この記事では書ききれなかった想いや、今だから言える話、
動画で語られた社員一人一人の思いや裏側は
SASIのポッドキャスト番組アイデンティティ経営ラジオにて深掘りしていきます。

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