「正しいかどうか」より「本質的かどうか」【プロデューサー:榊田栄作】

この連載について

この記事は、中小企業の“経営の現場”の記録です。
日々、企業とともに悩み、揺れ、言葉を探してきたSASIのプロデューサー・ディレクターが、実際に立ち会った“あの瞬間”を綴っています。

登場する企業名・人物名は仮名ですが
その場で交わされた言葉や空気、涙や沈黙はすべて本物です。


「—で、栄作さんは、結局何がしたいんですか?」

ここからは、SASIプロデューサー榊田栄作の言葉で綴っていきます。

「—で、栄作さんは、結局何がしたいんですか?」

オンライン会議の向こう側から聞こえてきた、お客様からのストレートな一言。
僕は、返す言葉もなかった。
頭の中が、じわーっと白くなっていくのを感じる。

SASIに転職して数ヶ月。
任された重要クライアントとの初めての大きな提案の場で、僕は立ち尽くしてしまった。
ただただ、情けなかった。
ただ、今振り返れば、この大失敗が僕の仕事への向き合い方を変えるきっかけになったんだと思う。

任された仕事と、感じ始めた「違和感」

僕がSASIに入社したのは5月のこと。
前職の経験を活かすためにも、入社後すぐにある老舗食品メーカーの担当チームに加わり、気合が入っていた。
その会社には、社長が開発責任者と二人三脚で育ててきた、会社の売上の大半を占める大切な自社ブランドがあった。
そのブランドのD2C事業を、さらに成長させることが僕のミッションだった。
しかし、お客様との対話の中で、少しずつ「違和感」を感じ始めていた。
お客様はこれまで我々に頼っていた部分を、これからは自分たちでできるようになりたいと考えていた。
こちらが提案しているものと、お客様が本当に求めていることの間に、少しずつズレが生まれているような気がしていた。

会議は凍りついた

それでも僕は「売上を伸ばす」という自分のミッションを遂行しようと、全体のKPIを設計し直し、改善策を携えて会議に臨んだ。
結果は、惨敗だった。

僕が提示した数値の前提がお客様の認識とズレていたこと、そして僕が少し焦って話してしまったこともあり、会議の空気はどんどん冷えていく。

そして、専務から言葉を投げかけられた。

「で、この会議で結局何がしたかったんですか?」

気まずい沈黙が流れる。
チームのメンバーにも、お客様にも、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

「本当にやるべきこと」はなんだろう

会議の後、 「なんでダメだったんだろう」「何がズレてたんだ?」と、頭の中でぐるぐると考えを巡らせていた。
チームのメンバーと話す中でも、一つの考えが固まっていく。
それは、お客様が口にしている「要望」に応えるだけでは、きっとダメだということ。
僕たちが「本当にやるべきこと」は、もっと別のところにあるんじゃないか。

そうしてたどり着いたのが、
「新しい事業を立ち上げませんか?」という、全く角度の違う提案だった。
この提案をする前に清人さん(SASI代表 近藤)にこの話をするのは勇気がいった。
「売上の話で失敗したのに、何を言ってるんだ」と呆れられるんじゃないか。そんな不安が頭をよぎった。
でも、清人さんの反応は違った。

「面白いじゃん。やってみなよ。僕はそれがSASIらしいと思うよ」

その言葉に、本当にホッとした。

売上に繋がらなくても、伝えなければいけないこと

僕たちが改めて提案したのは、これまでのブランドとは全く違う、専務の価値観や問題意識を起点にした新しい事業の構想だった。
社長たちが築き上げてきたものの、その先。
新しい世代が会社の未来をどう描くか、という問いそのものだった。
結果として、この提案がすぐに採用されることはなかった。
「すごく面白いけど、今じゃない」
それが社長の答えだった。

でも、僕にとってはそれでよかった。
前職の大きな組織にいた頃、僕は「本当に顧客のためになること」と「会社の売上目標」との間で、自分の意見を飲み込んでしまうことが何度もあった。
でも、今回は違った。
たとえ提案が採用されなくても、相手の未来を本気で考えた結果として「伝えるべき」と信じたことを、自分の言葉で伝えられた。

それが、僕にとっては大きな一歩だった。

「正しいかどうか」より「本質的かどうか」

「正しいかどうか」も大事だけど、それ以上に「本質的かどうか」を考える。
僕たちの価値は、お客様がまだ気づいていない可能性を示すことなんじゃないか。
あの日、専務に問われた「何がしたいのか?」という言葉。
あの言葉があったからこそ、自分たちが相手に対して本当に貢献できることを提案できたと思う。

🎧 書ききれなかった想いは、アイデンティティ経営ラジオ(旧DOOR RADIO)で

この記事では書ききれなかった想いや、今だから言える話、
動画で語られた社員一人一人の思いや裏側は
SASIのポッドキャスト番組アイデンティティ経営ラジオにて深掘りしていきます。

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