伝統の「価値」を新たに伝える醤油蔵

CL:大徳醤油 株式会社
Branding Design
兵庫県養父市
http://daitoku-soy.com/gyosho/

伝統的な天然醸造が危機

兵庫県の北中部に位置し、中山間地域農業における改革拠点として国家戦略特区に指定されている養父市に本社工場がある大徳醤油株式会社。大徳醤油は1910年に浄慶醤油店として創業し、1950年にマルト醤油株式会社を創立、その後大徳醤油株式会社に社名変更して、現在に至ります。大手醤油メーカーの醤油の醤油をスーパーで買うのが当たり前になっている現在、地域の醤油屋がどんどん廃業し、大徳醤油が創業した明治時代から現在では1/10以下しか残っていません。さらに国産大豆を使った醤油作りをしているメーカーはわずか1.7%(農水省調べ)となりました。醤油製造として有機JAS認定を取得し、国産有機大豆の醤油作りなどを始め、天然醸造の価値を継承する活動を続けておられます。

課題             若者への天然醸造の醤油の価値の伝達
その背景       速醸という天然ではない醤油作りの一般化
地域資源       蔵に住みつく微生物と但馬や日本各地の優良な原材料
着目点          古臭くない醤油の見せ方と本物感
解決方法       あえて寡黙なデザインで、説明的ではないデザインを施す

PHASE 1

アイデンティティ抽出

コンサルティング
個別相談

醤油への熱い思いをいかに伝えるか?

「醤油は『発酵食品の中でもっとも発酵食品』と呼ばれるほど、発酵が大切なんです。」と話し始め、醤油の製造工程や化学的メカニズムなど一聴するだけでは、素人にはわからないようなことも非常に熱く語り出されました。
印象的であったのは「大豆と小麦、塩で作る醤油が、スーパーで水よりも安く売っているというのは、どう考えてもおかしくないですか?」という浄慶社長の言葉でした。

一般的にこだわりの醤油として販売されているラベルやパッケージは、確かに筆文字でこだわり感を前面に出す手法や、たくさんの情報を盛り込んだ「いかにもこだわり感」という商品がほとんどです。
これでは、すでに体に良いもの、オーガニックということに興味を持っている人には伝わる可能性はあるものの、その結果として醤油全体における国産大豆を使用した醤油は1.7%の市場シェアしかありません。
そこで、浄慶社長にもう一度質問をしました。「天然醸造の醤油や魚醬の価値を伝えたいのは『誰』なのか?」
「これまでのこだわった買い物をする人にもそうですが、やはりまだ醤油のことを詳しく知らない人、に豊かなライフスタイルとして天然醸造の醤油を使って生活することが良いことであって、かっこいいことなんだということを知って欲しい。」と答えてくださりました。
ここに一つの目指す方向性があると考えました。

PHASE 2

ブランド立ち上げ

ロゴデザイン / グラフィックデザイン / webデザイン

浄慶社長のクールな印象の通り、見た目はなんとなくこだわりの魚醬(なんとなくイカのシルエットをしている)であり、それにも増してデザイン性を高め、余白を生かしたモダンなスタイルにすることを提案しました。
そして、そのパッケージである和紙を紐解くと、醤油とともに内側に書かれた「有機、地域、伝統」と天然醸造の説明が詰め込まれています。
一見クールに見えますが、内側は熱いという浄慶をそのままデザインにおとし込みました。
魚醬の使い方がわからないユーザーのために、魚醬を使った和食やパスタなどの洋食まで、レシピを含めた提案をwebやパンフレットに記載して、これからのユーザー獲得を意図したデザインを行いました。

PHASE 3

ブランド育成

異業種交流
イベント

食育や子供の免疫力向上にも効果があると言われる醤油作り。
数十年前までは各家庭で作っていた醤油作りを復活させるべく、天然醸造の手作り醤油づくりキットを販売したいというおもいから、SASI DESIGNもフォローし、クラウドファンディングを見事成功されました。
天然醸造の醤油というものだけではなく、醤油を作るという文化も継承しつつ、新たな顧客を作り続けておられます。

クライアントの声

大徳醤油 株式会社 代表取締役浄慶 拓志

サシデザインは常に新しいことにチャレンジされていて、一緒に仕事をしていてとても楽しい会社です。代表の近藤さんとは年も近くただのデザイン会社で終わらないクライアントの利益も考え、提案もどんどんしてくれる頼れる兄貴的な存在です。スタッフのみなさんもそれぞれ得意分野を持っておられ、いろんな場面でいつも頼りっきりです。

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